インフルエンザ感染を予防するには、お茶を飲むといいと言われますが、
迷信ではなくほんとうに科学的に証明されているのか、
どのようなしくみでお茶がウイルスに働くのか、
お茶のどんな成分に予防効果が期待できるのか、知りたいですね。
娘が幼稚園に通っているときも、園長先生が
「緑のお茶がインフルエンザにはいいらしいよ」とおっしゃって、
冬は、給食のときのお茶を、麦茶から緑茶に変えたことがありました。
- インフルエンザウイルスとは具体的にどんなものなのか
- お茶のどんな成分がどのようにインフルエンザウイルスに働きかけるのか
という流れでわかりやすくお話していきたいと思います。
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インフルエンザウイルスとは?
インフルエンザウイルスの表面には、足のようなたくさんの突起があります。
この突起を使って、ウイルスは、のどなどの細胞にくっつくのです。
カタカナの名称がたくさん出てきて、混乱するので、
わかりやすく図を使って説明しますね。
インフルエンザウイルスは多数の突起をもっている
インフルエンザウイルスの突起はタンパク質でできています。
スパイクタンパク といいます。
図で黄色の長い棒状のスパイクタンパクは、
ヘマグルチニン(HA)、
白く短いキノコ状のスパイクタンパクは、
ノイラミニダーゼ(NA)といいます。
ヘマグルチニンを使って、のどなどの細胞に付着します。
(ヘマグルチニンがのどの細胞表面の糖タンパク質に結合してしまうのです。)
ノイラミニダーゼは、ウイルスが細胞から放出されるときに
ウイルスと細胞を切り離す役割をします。
(ノイラミニダーゼによって、ウイルスが細胞外へ感染拡大します。)
インフルエンザウイルスの表面は、エンベロープという脂質性の膜で保護されています。
内部にはRNA遺伝子があります。
インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニンという突起を使って、のどなどの細胞に付着したあと、人の細胞に侵入し、
エンベロープ(脂質性の膜)を脱ぐようにして、RNA遺伝子を人の細胞内に放出するのです。
これが感染した状態です。
エンベロープは脂質性なので、
油汚れが石けんで落ちるように、石けんで溶けてしまいます。
エンベロープが溶けて破壊されてRNAがむき出しになると、
ウイルスは死んでしまって不活化されて無力になりますから、
感染予防には石けんで手洗いすることが重要なのですね。
新型コロナウィルスもエンベロープで保護されているタイプのウイルスです。
↓詳しくはこちらからどうぞ。
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お茶の成分がインフルエンザ感染を予防する
インフルエンザ感染予防効果のある緑茶の成分は、
- カテキン(ポリフェノールの一種)
- ストリクチニン(ポリフェノールの一種)
- テアニン(アミノ酸)
この3つです。
緑茶には、ウイルスをブロックする抗ウイルス作用と
体の内側から抵抗力をつける免疫力強化作用があり、
両者の相乗効果によって、インフルエンザ感染予防が期待できるのです。
ウイルスをブロック阻止して感染予防するお茶の成分
インフルエンザウイルスには2種類の突起がありましたね。
静岡県立大学薬学部教授で健康支援センター長の山田浩先生によると、
お茶に含まれるカテキンは、この突起に取り付いて、
ウイルスが人の細胞に吸着できないように阻止し、
また、ウイルスが細胞外へ感染拡大するのも阻止するとのことです。
カテキンにもいろいろあるのですが、
ウイルスの突起に取り付いてブロックしてくれるカテキンは、
エピガロカテキンガレートといいます。
カテキンは細胞に入ったウイルスが細胞内で増殖するのもブロックします。
インフルエンザウイルスが細胞に付着してから細胞内に侵入するまでに、
最速で20分と言われているので、20分ごとに緑茶を飲むのが理想ですね。
また、ストリクチニンは抗アレルギー成分で、ウイルスが人の細胞に付着したときに
ウイルス膜と細胞膜が融合するのを抑えて侵入できないようにします。
ストリクチニンは、エピガロカテキンガレートを上回る感染抑制力があるとも言われています。
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免疫力を高めて感染予防するお茶の成分
緑茶には、ウイルスをブロックするだけでなく、
体の内側から免疫力をアップさせて抵抗力をつけてくれる成分があります。
旨味のもとになるテアニンが免疫力を高める!
緑茶にはアミノ酸の一種であるテアニンという成分が含まれています。
(アミノ酸はタンパク質を構成している成分で、
お茶の旨味に寄与する成分です。)
リラックス作用の強いテアニンですが、
このテアニンには免疫力を高める効果があります。
抗ウイルス作用のあるカテキンとともに、テアニンを同時に摂ることで
相乗効果が高まり、感染予防力が強くなります。
緑茶を水出ししたときのカテキンは免疫力を高める!
また、緑茶を水出しすると、
お湯で淹れたときとは違って、
エピガロカテキンという別のカテキンが多く抽出されます。
ウイルスの突起に取り付いてブロックしてくれるカテキンを、
エピガロカテキンガレートといいましたね。
名前が似ていますが、
エピガロカテキン(EGC)と
エピガロカテキンガレート(EGCG)は、
化学構造が異なる別物です。
エピガロカテキンは免疫細胞「マクロファージ」の働きを強めます。
免疫細胞「マクロファージ」は、体に侵入した有害な細菌などを食べて殺してくれます。
免疫細胞の働きが強くなると、人の免疫力は高まり、感染予防になるのですね。
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紅茶もインフルエンザ感染阻止できる!
緑茶も紅茶も、もとは同じ茶葉です。
「チャノキ」から収穫されます。
緑茶を酸化発酵させて紅茶ができます。
緑茶だけでなく、紅茶にもウイルスをブロックする力があります。
緑茶のカテキン=エピガロカテキンガレートが、
インフルエンザウイルスの突起に取り付いてブロックするということでしたが、
このエピガロカテキンガレートが、紅茶として酸化発酵すると、結合して
テアフラビン という新たなポリフェノールになります。
発酵の過程でエピガロカテキンガレートの分子構造が変わってできたテアフラビンは、
ウイルスの突起に取り付く力がより強くなります。
紅茶メーカーの三井農林が試験管で行った実験では、
紅茶の抽出液により、99.96%ものインフルエンザウイルスを無力化したことが確認されました。
これは、緑茶よりも高い割合となります。
ミルクティーでは、紅茶ポリフェノールがミルクタンパクに取り込まれてしまい、機能しなくなるので、
効果は期待できませんが、
レモン、はちみつなどはOKです。
アッサムティーは、テアフラビン含有量が多いのでお勧めです。
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お茶うがいは感染予防に効果大!
静岡県立大学薬学部教授で健康支援センター長の山田浩先生の研究グループが
老人ホームの入居者や小学生を対象に行った調査研究によると、
緑茶うがいをした場合のほうが、水道水うがいよりも、インフルエンザ発症割合が低くなり、
緑茶を多く飲む小学生はインフルエンザの発症が半分になるとのことです。
うがいでウイルスの付着を防ぎ、飲んで体の内側から抵抗力をつける、というように、
緑茶を取り入れることを山田先生は勧めておられます。
薄い緑茶でのうがいでも効果があります。
紅茶でも、2杯目のティーバックで抽出した薄いものでもウイルスをブロックする効果は変わらないので、
紅茶うがいに使うことをお勧めします。
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まとめ
お茶には、抗ウイルス作用と免疫力アップの両者による
インフルエンザ感染予防のパワーがあることがわかりました。
今回は、インフルエンザウイルスと緑茶・紅茶についてお話しましたが、
台湾の茶葉に含まれるテアフラビンが、新型コロナウィルスの増殖を阻止することが発見されています。
(嘉義長庚紀念医院(病院)の中医(漢方医)グループ)
一般的な緑茶・紅茶の新型コロナウィルスに対する作用ですが、
2020年11月27日に、市販のお茶に新型コロナウイルスを不活化(無害化)する効果があると、
奈良県立医大(橿原市)から発表がありました。
お茶が免疫力そのものを向上させるということから、
静岡県の川勝平太知事は、緑茶で免疫力向上・健康増進を呼びかけています。
妊婦さんや子供たちは、カフェインが気になるところですが、
↓低カフェインの緑茶や紅茶も販売されています。↓
東京都世田谷区の羽根木インターナショナルプリスクールでは、
10月からインフルエンザ感染予防のために1日に数回、
カフェインレスの紅茶を子供たちに飲ませているそうです。
緑茶には、外側からのウィルスをブロックする力と、体の内側から免疫力をアップさせる力があり、
紅茶には、99.96%のウィルスブロック力があります。特にアッサムティーがよいです。
わが家では毎朝、家族で必ず緑茶を飲み、
日中は夫にも娘にも紅茶を水筒に入れて持たせています。
小学生の娘の水筒の紅茶は、カフェインレスの紅茶を使っています。
親子で毎日の暮らしにお茶を取り入れて、
ウイルスへの抵抗力強化と免疫力アップをめざしてみませんか?
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