このごろ育児書でよく見かける言葉に
敏感さ、敏感な子、敏感すぎる、ひといちばい敏感
などの言葉をよく見かけるようになりました。
「ひといちばい敏感な子」は、HSC = Highly Sensitive Child
の日本語訳です。
HSCという言葉を知ってから、
今までときおり感じた育児のむずかしさの謎が解けた思いがしました。
なんでうちの子だけ繊細で傷付きやすいのだろう、
ママの私がどこか過干渉過保護で甘やかしたのだろうか、
自分の育て方がどこか間違っていたのだろうかと悩むことがよくあったのですが、
全くママの育て方が悪いのではなく、
繊細さはむしろ誇るべきすてきな才能だと確信をもつことができました。
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HSC・HSPとは?
最初にHSC・HSPを提唱したのは、アメリカの心理学者「エレイン・アーロン」博士です。
心理学者エレイン・アーロン博士によるHSC・HSPの概念
HSCとHSPの概念の違いを説明しますね。
HSCは Highly Sensitive Child の頭文字ですが、
HSPというと、Highly Sensitive Person となります。
HSP は大人版 (ひといちばい敏感な人)、
HSC は子供版 (ひといちばい敏感な子) ということになるのです。
HSP・HSCは障害ではありませんし、病気でもありません。
とても敏感で感受性が強く、繊細さを持った生まれつきの気質のひとつです。
↓こちらはHSP・HSCについてのアーロン博士の著作です。
アーロン博士は、繊細な人々つまり、
「内向的」「怖がり」「引っ込み思案」などと
ネガティブに言われる敏感な人について研究しました。
そして、これらネガティブに言われる人々は、実は感受性が豊かで、
芸術的・詩的でクリエイティブな感性を持って生まれた遺伝的性質であり、
その性質は才能とも言えるということを明らかにしたのです。
実際にHSPの人の脳は、HSPではない人の脳よりも、
脳内の島皮質という場所が活発に動いているという研究結果があります。
島皮質は、人の内面の感情や、外部の感覚刺激を読み取って感じ取る感受性の源です。
人種・民族に関係なく、どこの国の社会にも15~20%くらいの比率で
HSP・HSCがいるとアーロン博士は言うのです。
つまり、学校のひとクラスに30人いると、そのうち5~6人は
HSCということになるのです。
HSCを日本で初めて紹介した精神科医の明橋大二先生
「明橋大二」先生は、『子育てハッピーアドバイス』の著書が有名ですが、
精神科医でスクールカウンセラーや児童相談所の嘱託医として
長年数多くの子供たちと出会ってきました。
その中で次第に、子供たちの中には感覚的にも心理的にも、
とても敏感な子供たちがいる事に気付きました。
ちょうどそのとき、心理学者エレイン・アーロン博士の著書と出会い、
HSCについて知り、先ほどご紹介した「ひといちばい敏感な子」を翻訳しました。
HSCを「ひといちばい敏感な子」と翻訳し、日本に紹介したのです。
HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子 [ 明橋大二 ]
明橋大二先生は、とてもわかりやすくHSCについて教えてくださいますよ。
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HSC・HSPの4つの特徴
HSC・HSPには必ず次の4つの性質があり、どれひとつでも当てはまらないなら、
HSC・HSPではないということです。
- 深く処理する
- 過剰に刺激を受けやすい
- 感情反応が強く、共感力が高い
- 些細な刺激を察知する
ひとつひとつ説明していきますね。
①深く処理する
HSC・HSPは、ただ敏感なだけではありません。
少しの刺激や情報から、他の人以上に深く感じたり、深く考えたりします。
無意識に、あるいは意識的に、物事を徹底的に処理・理解するのです。
「一を聞いて十を知る」ということです。
敏感すぎる、つまり「過敏性」ではなく、「感受性が強い」ということなのです。
HSCの小さな子供は、大人から聞きかじった言葉を使って大人びた受け答えをすることもよくあります。
大人から聞いた言葉を深く理解・消化して、その言葉を使って自分の言いたいことを表現できる文章力が
幼いうちから備わっているのです。
また、HSPの人は、初めての場所や人の前では自分の先入観で動かずに、
状況を理解したり、相手の気持ちを深く読み取ったりするので、
それに合わせて行動に時間がかかりますが、
先入観で判断しないので、場の空気を読み取る力も強く、
異文化コミュニケーション能力に長けているのです。
②過剰に刺激を受けやすい
強い明るさ、大きな音、手触り、匂い、暑さ寒さなど、
自分の内外の刺激に人一倍敏感で、
多く受けた刺激を処理し、配慮するので、精神的にも肉体的にもかなりの負担がかかり、
疲れやすくなります。
他の人と同じ刺激を受けても、感受性の強さによってより多くの刺激を受けてしまいます。
人が集まるパーティー、街、音の大きな映画館や遊園地などは、
HSC・HSPにとっては刺激が強すぎます。
HSCの子はディズニーランドに行っても喜ばずに、熱を出してしまうこともあります。
子供の不登校の原因のひとつ、慢性疲労症候群を発症することもあります。
③感情反応が強く共感力が高い
HSCの子は人の心をよく読み取ります。そして、人に自分を合わせるのが得意です。
親が何を望んでいるかをよく読み取りますし、先生の言うこともよーく聞きます。
友達の望んでいることも読み取って、配慮や気配りをすることができます。
幼稚園や学校では優等生といえるほどまわりに気を配り、
帰宅すると疲れはててわがままがドッと出ることもしばしばです。
④些細な刺激を察知する
感受性が強いので、小さな音やかすかな匂い、ちょっとした変化など
細かいところまでよく気がつきます。
HSCの子は、味噌汁の味噌が変わったりするとすぐに気づいて、
「いつもと違う」と言って飲まなかったりすることもでてきます。
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自閉症スペクトラムと混同されることが多いHSC・HSP
自閉症スペクトラムとHSC・HSPは全く別のものです。
自閉症スペクトラムとは、広汎性発達障害(PDD)やアスペルガー症候群(AS)など
さまざまな自閉症を一括りにした概念です。
ネット上では、この自閉症スペクトラムとHSC・HSPが混同されて説明されていることがあるのです。
自閉症スペクトラムの軽度のものがHSC・HSPだろうなどという憶測も飛び交っています。
しかし、自閉症スペクトラムとHSC・HSPは全く別のものです。
両者は、感覚的な刺激にとても敏感という点で、混同されやすいのですが、
自閉症スペクトラムは、場の空気が読めず、相手の気持ちには敏感とはいえません。
HSC・HSPは人と話すときに相手の顔を見ますが、
自閉症スペクトラムでは、靴などコミュニケーションとは全然関係ないところを見て興味を持ち、
人に無関心で、人の行動の意味がわかならないことが多いです。
HSPの大人は、コミュニケーションについて気にしすぎて、人の視線が気になり考え過ぎてしまい、
自分はアスペルガー症候群(AS)ではないか、と悩みやすいそうです。
しかし、実際のアスペルガー症候群(AS)の人は、人に無関心で他人の行動の意味がわかならないことが多く、
人づきあいが不器用です。
一方、HSPは人への強い興味をもち、生まれつき社交性がたっぷりとあるのです。
また今回、最初のほうでお話したHSC・HSPの特徴の中で、
HSPは脳の島皮質(人の内面の感情や、外部の感覚刺激を読み取って感じ取る源)が活発ということを説明しましが、
自閉症スペクトラムの人たちは、この島皮質の活動が低いという違いが見られます。
HSC・HSPは、明るいランプでまわりを照らして歩いているようなもので、
ふつう見えないゴミや塵まで見えて疲れてしまうという感じです。
一方、自閉症スペクトラムは、真っ暗なお化け屋敷の中を歩いているようなもので、
暗闇から突然ものが飛び出してきてびっくりしてしまい、
疲れてしまう、といったたとえがぴったりです。
HSC・HSPは障害でも病気でもありません
HSP・HSCに無理解な医療機関はまだまだ多く、ストレスに疲れ果てて心療内科などを受診し、
服薬を勧められることもありますが、HSP・HSCは病気でも障害でもないのです。
繊細な性質を鈍麻させて無理やり変えるのではなく、
普段の生活で繊細な性質を十分に考慮した工夫をするのがいちばん必要なことです。
例えば人混みに長くいないようにするとか、ひとりの時間を大切にするなどの工夫です。
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HSPの臨床医の長沼睦雄先生が、HSPの生きづらさを解消するためのヒントやアドバイスを教えてくれます。
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HSCと子育て
繊細なHSCの子の育児に悩む親御さんは多いですが、繊細な子はすばらしい素質を持っています。
HSC・HSPは生まれつきの性質
世間は、繊細な子供を面倒くさいとか、弱い、甘えているなどと
悪いとらえ方をする人が多いです。
そして、親の育て方に問題があるから子どもがそのようになったと、
親、とくに母親を責める声が多いです。
しかし、親が繊細な子供にしたのではなく、
生まれつきそのような性質をもって生まれてきたのです。
そして、HSC・HSPの4つの特徴からもわかるように
その繊細な性質はコミュニケーションにおいても芸術面においても
才能というべきすばらしい素質なのです。
HSCの子どもは敏感で親のいろいろな配慮を必要としています。
他の子よりも親の配慮のクッションが必要なのです。
これは過保護や過干渉とは違うことです。
繊細で傷付きやすいHSCの子が特に必要としているのは
「自分を理解して助けてくれる人がいる」と思えることです。
繊細な感受性を持つ宿命として試練も多いですが、
HSCの子こそ人と人との間の園滑油としての役割を果たし、
人々のコミュニケーションを助け、愛と芸術に貢献して
美しい平和な世界を作るための重要な働きをしているのです。
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繊細さを弱さではなく、誇りとして生きていきましょう!
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自分軸で生きる
HSCは共感力がとても強いので、自分より人を優先してしまいがちです。
相手の気持ちを深く汲み取って感じとるので、自分と相手の境目すらぼやけてしまいます。
常に他人が自分に入り込んでしまう危機感すらあるのです。
周りの人に振り回され過ぎて、自分の感情が何か、自分の思いはどうなのか、
自分を失いやすいのです。
ですから、HSCの子は幼稚園や学校が苦手な子が多いです。
人中で自分を軸にして生きることを、HSCの子には意識してほしいのです。
自分軸で生きるのは、自己中心的なわがままではありません。
今、自分はどう感じているのか、常に意識を自分に確認することが大事なのです。
自分の呼吸を感じてみる、自分が立っている足の裏の感覚をあらためて確かめる、
そんな簡単なことからも、自分軸を確立する助けになります。
わが家のHSCの娘も、幼稚園や小学校がきらいです。
どうしていかなければならないの?と聞かれると、私も考え込んでしまいますが、
たくさんの人の中で、自分を失わない訓練になるんだよ、
人は、人の中で暮らしているから、人の中にいても自分を保つトレーニングや
人との安全な距離感を体で覚えて感じることは、生きていくうえで大事なんだよ、
と話しているのです。
HSCの子育て苦労体験談はこちらからどうぞ。
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